トライアスロンのスイムとはどんな競技なのか、まずはこちらをご覧ください。
お分かりの通り、トライアスロンのスイム競技は大自然の中を泳ぎます。
- 海とプールは大きく異なる
- プールで本番以上の距離を泳いで自信をつける
- 安全第一
オープンウォータースイミングとは
トライアスロンのスイムは,3種目の内最初に行う競技であり、プールではなく海や湖を泳ぎます。これは水泳の中でもオープンウォータースイミングと呼ばれる競技であり、オリンピック種目にもなっています。
トライアスロンにおけるスイムでの特徴は、やはりプールではなく自然の中を泳ぐという点です。
プール以外の場所で泳ぐ場合、想像以上にプールでの競泳と異なる点がありますのでご説明します。泳ぎに自信のある方も、しっかりと目を通しておきましょう。
波がある
海とプールの最も大きな違いは波があるということです。
海は大自然の一部なので波があります。湖でも海ほどではないにしろ、風の影響で多少なりとも波は発生します。波があると、当然泳ぎづらく、特に息継ぎのタイミングが悪いと海水を飲んでしまう危険もあります。更に、波に逆らって無理に泳いでしまうと大幅に体力を消耗してしまうこともあります。
波の大きさや動きは一つとして同じものはなく、当日の気候によっても大きく変わってしまいます。そのため、泳ぎながらも周りをしっかりと見渡し、波の動きに無理に逆らわず柔軟に対応するといった冷静さが必要となってきます。
真っ直ぐ泳げない
みなさんは、自分が真っ直ぐに泳ぐことができていると思いますか?
実はこれってプールの底に引かれたラインやコースロープのおかげなのです。プールでは、これらのおかげで常に方向を調整することができ、誰でも真っ直ぐに泳ぐことができます。しかし、海にはラインもコースロープもありません。
そのため、プールでしか泳いでない方が初めて海で泳ぐと、想像より遥かに真っ直ぐ泳げないことに驚くことでしょう。周りに目印の少ない海では、コースから逸れてしまっても泳いでいる最中は全く気づきません。
方向を誤ると、大きくコースから逸れてしまい、必要以上の体力を使用してしまうことに繋がります。
海や湖で適切な方向へ泳ぐためには、「ヘッドアップクロール」という技術を使用して、前方を確認しつつ泳ぐのが一般的ですが、最初は平泳ぎで前方を確認する方法でも全く問題ありません。
集団で泳ぐ
プールではコープロープがしっかりとあり、監視員もいるので、他のスイマーと接触することはほとんどありません。
しかし、トライアスロンのスイムは集団で泳ぎます。数十人が同時にスタートをし、泳いでいる最中は更に入り乱れます。そのため、他の参加者との接触は避けられません。
密集した状態で泳ぐと、接触してゴーグルが外れたり、海水を飲んでしまったりとパニックになってしまう要素が大いにありますので、絶対に最初は無理をせず、集団から離れて自分のペースで泳ぐようにしましょう。
ウェットスーツで泳ぐ
トライアスロンのスイムでは、ほとんどの大会でウェットスーツの着用が義務付けられています。ウェットスーツを何故着るのか。それは安全のためです。
ウェットスーツを着たことがある方は少ないかと思いますが、ウェットスーツを着ると身体が浮きます。生身とは比べ物にならないほど浮きます。さらに海では塩分濃度が高いため、その効果もあり、水着でプールを泳ぐのは全く感覚が異なるでしょう。
このように、ウェットスーツを着ることでスイムが苦手な方でも十分に泳ぎ切ることが可能となるのです。
しかし、ウェットスーツを着ると肩周りが窮屈になって普段より泳ぎづらくなってしまったりということもあるので、レース前に一度はウェットスーツを着て泳いでみましょう。
泳ぎ方
スイムパートでの泳ぎ方は基本的にクロールです。明確に決まっているわけではないので、平泳ぎやバタフライでももちろん良いのですが、それで泳いでいる方は見たことがありません。制限タイムに間に合わなくなってしまうかと思います。
クロールで1500mというと、最初は途方もない距離に感じられるかと思いますが、少しずつ泳げる距離を伸ばして行きましょう。基本的にはクロールという同じ泳ぎをひたすら続けていくだけなので、100m泳げる方は1500mも確実に泳げるようになります。
また、レースの最中に疲れてしまったら平泳ぎで少し休んでも全く問題ありません。ただし、平泳ぎは後ろに大きく蹴りが入り、後方の参加者の顔を蹴ってしまうケースも多くあります。そのため密集地で平泳ぎを行うことは絶対に避けましょう。
疲れたらブイやロープを掴んで休んでもOKです。
安全第一に、自分のペースで泳ぎましょう。
距離
オリンピックディスタンスでのスイムの距離は1500mです。これは25mプール30往復分に相当し、多くの方が30~50分程で泳ぎ切ることができます。
基本的にトライアスロンは各種目とも制限時間が決まっており、大会によって異なりますが、スイムパートは50~60分程度に設定されています。
しっかりと練習に取り組んでいれば誰でもクリアできる時間設定ですので、焦らずに自分のペースで淡々を泳ぎ続けましょう。
コースはレースによって様々ですが、複数設置されたブイの周りを2,3周泳ぐ周回コースが多いです。
大きなブイが浮いているので、それを目指して泳いで行きます。波が高かったりすると、ブイが見えづらくどこに向かって泳げばよいのかわからなくなることもありますが、そんなときでも落ち着いて周りを見渡して他に目印となるものを探して自分のペースで泳ぐことが大切です。
例えば、こちらの画像は2020年横浜トライアスロンのコースマップです。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、残念ながら中止となってしまいましたが、毎年海外の有力選手も多数参加する大きな大会です。
画像の中心程にある、青色の矢印がスイムコースです。こちらを見ると、三角形の形に泳ぐことがわかるかと思います。このように、途中で何度かターンを行うコースが一般的です。
必要なアイテム
それではいよいよスイムに必要なアイテムを紹介していきます。
スイムに必要なアイテムの種類は少なく、価格帯も高くないものが多いので、ウェットスーツ以外は練習を開始する前に一気に揃えてしまいましょう。
水着
選び方は、気に入ったデザインを選ぶことです。
レース本番はトライウェアを着るため、水着はプールでの練習時に使用します。そのため、ぜひとも自分が気に入ったデザインの水着を購入し、モチベーションを上げて行きましょう。
arena、speedo、Mizunoが有名なブランドで、種類も充実しているのでそこから選べば良いかと思います。機能も様々ですが、最初の内は気にしなくとも大丈夫です。
価格帯は男性用が3~5000円、女性用が6~8000円程が多いです。生地の面積が大きい分、女性用の方が多少値段が高くなるのですね。
スイムキャップ
こちらも気に入ったデザインを選びましょう。
スイムキャップは大きく「メッシュタイプ」と「シリコンタイプ」に分かれています。
メッシュタイプは通気性があり、種類も豊富にあります。通気性がある分、水が内部にも浸透してしまうため、髪がプールの水に含まれる塩素で傷みやすいというデメリットがあります。学校の授業で使用した方も多いのではないかと思います。
シリコンタイプは、その名の通りシリコンでできているキャップであり、プールの水が中に浸透せず、泳いでいる最中の水への抵抗もメッシュタイプと比べると低いため、レース向きのキャップと言えます。しかしその分通気性が低いため、夏場や長時間使用すると頭が蒸れて体温が上がってしまうというデメリットもあります。
どちらも一長一短ありますが、価格帯は1000円程度ですので、両方使用してみて気に入った方を使用したり、使い分けても良いかもしれません。
なお、レース本番では、配布されたシリコンキャップを使用するため、練習で使用するキャップのみ準備すれば問題ありません。
ゴーグル
ゴーグルには種類があり、競泳用とオープンウォーターやトライアスロン用があります。そのため、オープンウォーターやトライアスロン用のゴーグルを選びましょう。競泳用よりも、レンズ面が広く、屋外でのスイムに適した仕様となっています。
レンズ面もミラーレンズと透明なクリアレンズに大きく分かれますが、屋外での使用を見越して最初はミラーレンズをオススメします。
Aqua Sphere,SWANS,VIEWといったブランドが有名で、価格帯は3~4000円程です。気に入ったデザインを選びましょう。
ウェットスーツ
スイム用具での一番のハードルがこのウェットスーツです。
まず、購入できる場所が限られます。トライアスロンショップやかなり大きいスポーツショップでないと扱っていないところが多いでしょう。価格帯も幅広く、安いものでは2,3万円ですが、高いものだと10万円を超えるものもあります。最初は安いもので構いませんが、ショップの方に相談し、自分の体型に合ったものを選びましょう。
ウェットスーツには、袖があるタイプ(フルスーツ)とないタイプ(ロングジョン)の2種類に大きく分けられます。
使い分けの基準は”水温”です。具体的には水温23℃以上であればロングジョン、水温22℃以下であればフルスーツを目安の一つにしてください。
そのため、挑戦するレースの時期によって選ぶと良いでしょう。レースの時期が夏場であれば、袖のないロングジョンタイプ、春先や秋口であればフルスーツタイプといったイメージです。
また、トライアスロン用ウェットスーツのレンタルサービスもあり、そちらもオススメです。ウェットスーツも安いものではないため、トライアスロンに挑戦したいけど、今後も続けるかはわからないという方は使用する際にレンタルするという形でも全く問題ありません。
私も最初はレンタルをしてましたが、宅急便で手配ができ、品質も全く問題ありませんでした。選択肢の一つとしてご検討ください。
ウェットスーツは使用できないプールも多いため、練習開始当初は必要ありませんが、海での練習を行う前には用意しておきましょう。
ワセリン
ワセリンというと保湿剤として使用したことがある方も多いかと思いますが、トライアスロンをする上では必須の品となります。
トライアスロンはウェットスーツを着て泳ぐのですが、ウェットスーツはゴム製のため、首元や肩回りが泳いでいく中で擦れてしまい、擦傷となってしまうこともあります。スイムは最初の種目であるため、ここで傷ができてしまうと痛みによる集中力や体力低下など、その後のレースに大きく支障をきたしてしまいます。
そのため、泳ぐ前に該当箇所にワセリンを塗っておき、摩擦を軽減させることでそのような傷を防ぐ効果があります。練習を始めてすぐには必要ありませんが、海練を行う前には準備しておきましょう。amazonやドラッグストアで購入することができます。
プールバッグ
続いて必須ではありませんが、あると便利がものとして紹介します。
まずはプールバッグ。防水性に優れているため、濡れた水着やタオルを入れた状態でリュックなどに入れても外側に浸透することがありません。また、プールバッグのみを持って練習に行くこともできますね。
練習に行く際に一つあると便利です。
耳栓
どうしても耳に水が入ってしまうという方には耳栓をオススメします。市民プールなどでも使用可能で、レース本番にも使用することができます。
安価に購入できるので、気になる方は一度試してみると良いかもしれません。
練習メニュー
スイムの練習方法としては、最初は水に慣れ、徐々に泳ぐ距離を伸ばしていくという流れになります。
具体的な目標としてはこちらです。
- プールで2000m連続で泳ぐこと
- 海での練習を1回は経験すること
目指すオリンピックディスタンスでのスイムの距離は1500mですが、目標はそれよりも長い2000mとしています。これは、「自信をつけて何があっても落ち着いて泳げるようになるため」です。
ご紹介したように、海でのスイムはプールと大きく変わるため、プールで泳ぐのよりも体力を多く使ってしまいます。そのため、本番よりも長い距離を泳ぐことで、「何があっても自分は1500m泳ぎ切ることができるのだ」という自信をつけることができ、不足の事態が生じた場合でもパニックにならず落ち着いて対応できるようになります。
また、同様にプールと海が具体的にどのように違うのかを知るため、本番前に海での練習を1回は(できれば2回)経験しましょう。
毎回のトレーニングメニューはこちらを参考にしてみて下さい。
- アップ:skpsそれぞれ50mずつ
- メイン:クロール100mから徐々に距離を伸ばしていく
- ダウン:クロール、平泳ぎそれぞれ50m
基本的な練習メニューとしては、最後までこの方法を続けていきます。
アップで行う”skps(スキップス)”とは、スイム、キック(ビート板キック)、プル、スイムの頭文字をそれぞれとったもので、一般的なアップで行われるものとなります。メインでの泳ぐ距離を徐々に伸ばしていき、3ヶ月後には2000m泳げるように頑張りましょう。
1ヶ月目
- 用具を揃える
- 水に慣れる
- 400m連続で泳げるようにする
最初はまず水着やゴーグルといった用具を揃えるところから始めます。これがないと、そもそも練習ができないですよね。この段階では、まだウェットスーツは準備しなくても問題ありません。
用具を準備できたらいよいよ練習開始です。
学生依頼久々のスイムという方も多いかと思うので、最初はウォーキングや、自由に泳いでみて、水に慣れるところから始めましょう。慣れてきたら徐々に泳ぐ距離を伸ばして行きましょう。
1ヶ月目は、メインでの距離を400mまで伸ばせるように、週2回を目標に練習に取り組んでいきましょう。
2ヶ月目
- 1200m連続で泳げるようにする。
- 海での練習1回目
- ウェットスーツの準備
2ヶ月目も1ヶ月目と取り組む内容は変わりません。メインの距離を伸ばしていき、1200m連続で泳げるように練習していきましょう。
1200mというと、25mプール24往復で、30分〜40分くらいで泳げれば十分オリンピックディスタンスの制限時間には間に合います。
1ヶ月目よりも体力がついて、トレーニングが楽しくなってきているのではないでしょうか。2ヶ月目も週2回を目安に練習に取り組んでいきましょう。
また、2ヶ月目の最終週付近で可能であれば海での練習を入れましょう。
海での練習は1人だと非常に危険ですので、スクールなどが企画している練習会に参加しましょう。こういった練習会は単発でも全く気兼ねなく参加できますので、どんどん活用していきましょう。
ウェットスーツはこの頃に準備をしましょう。レンタルと購入のどちらでも構いませんが、海練で着れるように逆算して手配しておきましょう。
体力はどんどん向上していると思いますが無理は禁物です。
調子の悪い時は思いきって休みましょう。楽しむことが1番です。
3ヶ月目
- プールで2000m泳げるようにする
- 海での練習2回目
いよいよ3ヶ月目です。ここまでくれば後もう少し。
3ヶ月目の練習も、泳ぐ距離を伸ばすことを心がけていくのは変わりません。最終的に2000mまで泳げるようになれば、レース本番も全く問題なく落ち着いて泳ぐことができるでしょう。
ここまで地道に練習を積み重ねてきたあなたなら、きっと達成できるはずです。
大体レース2週間くらい前の練習が一番ハードなものとして、レース1週間前からは激しい練習はせずに、疲労を抜いて万全の調子で本番に望みましょう。
スイムパートで一番重要なこと
最初から長距離を泳ぐのは難しいかもしれませんが、諦めず地道に練習に取り組んでいけば必ず泳ぎ切ることはできます。
しかし、海とプールでは大きな違いがあり、プールでのスイムに自信がある方もしっかりと準備をすることが必要となるのです。特に、本番までに一度は海練を行なっておくことをオススメします。
スイムはトライアスロンでの最初の種目ということもあり、緊張や興奮から普段よりハイペースになって体力を消耗してしまったり、集団泳でパニックになってしまってリタイアしてしまう恐れもあります。
そのため、スイムパートを無事にクリアするためには、周りは気にせず自分のペースで淡々と泳ぎ続けることが最も重要です。そしてそれは、スイムパートのクリアだけではなく、自分や周りの参加者への安全にも繋がります。
勢いだけでは決してクリアできないのがトライアスロンのスイムなのです。常に落ち着いて、無理をせずに楽しみましょう。
練習中も本番も無理は絶対に禁物です。